平安のパティシエール

【タイトル】

平安のパティシエール

 


【配役】

2;1;0

 


桃;斎藤 桃子(さいとう ももこ)女

洋菓子の専門学校所属の20歳。

 

 

 

晴;安倍 晴明 (あべのせいめい)男

平成21年にタイムスリップしてきた男性。30歳

突如家に落雷が落ち、桃子がタイムスリップしてきた。

桃子を式神と名乗り、貴族たちにスイーツを食べさせる役目を与える。

 

 

 

道;藤原 道上(ふじわらのみちうえ)男

晴明を敵視する貴族。29歳。

 

 

 

 

 

 

【本編】

 


道;ほっほ…。晴明よ。久しいでおじゃる。

 


晴;これはこれは道上殿。いかがされましたかな?

 


道;なぁに。麻呂の戯れじゃ。

        お主…最近、帝に会っているそうではないか。

 


晴;えぇ。帝に占いを頼まれておりましてな。

 


道;忌々しい…。薄汚いキツネめ…。

 


晴;ふふ…。思っている声が漏れていますよ。道上殿。

       妖に取り憑かれますぞ。

 


道;だ、だまれ!!

 


晴;さて…。情緒不安定な貴族様の相手も疲れるな…。

       どうしたものか…。

 

 

 

桃;いーーーーやーーーー!!

 


晴;ん?人が……落ちて…!!

       俺の屋敷がああああ!!!

 


桃;いてて…あれ?ここは…どこ?

 


晴;おい…。

 


桃;はい?あれ和服??

 


晴;お前…。どこからきた?

 


桃;どこからって…あれ?オーブンが爆発して…。

 


晴;どんな天然だよ…。

        いいか、ここは西暦943年の平安京平安時代だ。

 


桃;え?何を言って…。

 


晴;俺も最初はそう思ったよ。平成21年に俺はここに飛ばされた。

       まったく…。現代じゃ26年かな。

 


桃;え?今…令和ですよ?

 


晴;令和…?元号変わったの?

 


桃;はい。みんなタピオカとか飲んでますし。

 


晴;タピオカ!?

        あれ、まだ流行ってるんか!?

 


桃;え?タピオカって最近流行った飲み物ですよ?

 


晴;…いやすまん。混乱してきた…。

 


桃;わたしだって混乱してるんですよ!!

 


晴;とりあえず、その服は目立つ。

       これに着替えろ。

 


桃;これって?

 


晴;単(ひとえ)だ。十二単って学校で習っただろ?

 


桃;あー…ありましたね。

       ちなみに…あなたは?

 


晴;俺か?俺は晴明。安倍の晴明だ。

 


桃;はは…。安倍の晴明とか…。まじ…卍。

 


晴;意味がわからんが…。

       とりあえず…お前パティシエだろ?

 

桃;え?えぇ……。

       

晴;ちょっと手伝って欲しいんだが……。

 


     【間を開ける】約5秒ほど

 


晴;さてっと…道上殿。

        文(ふみ)は読んでくださったのですね

 


道;晴明…。あれは文とはいわぬ。

       何が食事会だ…。お前と飯が食えるか。

 


晴;ほう…では何故来てくれたのでしょうか?

 


道;飯ではなく、菓子だけ食べさせろ。

 


晴;はっはっは!!そうですよね…。

       極楽の菓子…。帝に先に食べさせようと思ったのですが、

       道上殿…。私は貴族と対立したいわけではないのです。

 


道;ほう…どう言うことかな?

 


晴;道上殿…。あなたは私が嫌い…

       いや、嫌いなんてもんじゃあない。憎んでいる。

 


道;お主!?世の心を!?

 


晴;ふふ…。いやいや。お気になさらず。

       大丈夫です。悪意は必ず人に存在する妖のような物。

 


道;あれほど読むなと言ったであろう…!!

        は、早く菓子をくわせろ!!

 


晴;そうですね…。ではこちらへ。

 


桃;お待たせいたしました。道上様。

        式神の桃子といいます。

 


道;ふむ…なんとも安っぽい顔の女じゃ…。

       晴明よ。こんなのが好みなのか?

 


桃;なっ…!!

 


晴;いえいえ。道上殿。式神は自分で作りますが、

       姿形は変えられませぬ。ですが…。腕前はご安心を。

 


桃;……では失礼します。

        極楽スイーツ。平安プリンでございます。

 


道;ぷ…ぷりんとな?

        これは、黄金色の……汁?

 


桃;これは牛の乳と雉(きじ)の卵を混ぜた物です。

        汁に甘葛煎(あまづらせん)を加えているので、甘味のあるお菓子になっております。

 


晴;さぁ…。道上殿…。

        味を…試してみては?

 


道;な、なんなんだ…この香り……この風味はぁぁぁぁ!?

 


晴;道上殿…。ヨダレが。

 


道;う、うるさい!!食べる!!食べるぞ!!

       あむっ……。な…なんじゃこの味は…。和歌を…和歌を読まねば!!

 


       なめらかな   口どけゆるむ   いと 旨し    春の日差しの  雪解けかな

 

 

 

晴;ふむ。お見事。

 

 

 

桃;はぁ?プリン食べて和歌?

       しかも意味わかんないんだけど??

 


晴;プリンの口どけが、雪解けのようになめらかで。

       春の日差しのように感じたという意味だ。

 


桃;どのみち…意味がわからない…!!

 

 

 

晴;よーし…桃子。よくやったぞ。

 


桃;え?いきなり呼び捨て?

 


晴;これからは俺の式神という設定で生きていかないといけないからな。

 


桃;あ、それで晴明さん。

 


晴;あー質問は後で。道上殿に今後のスポンサーになってもらわねぇと。

 


道;お…おぉ。晴明…。これは…これは美味じゃ。

       美味なのじゃ!!

 


晴;でしょうな。極楽の菓子ですからな。

        ですが…これは二度と食べれなくなるでしょう。

 


道;な、なんだと!?

       そんなことは麻呂が許さん!!

 


晴;それが帝のお考えだとしても?

 


道;…なっ!?

 


晴;私はこれから帝にこのプリンをお出ししようと思うのですが…。

       そうなると…もう二度とたべられませんな。

 


道;た…頼む!!もう一度!!もう一度だけぷりんを!!

 


晴;そうですねぇ…。私は別の物を献上しようと思うのですが…。

       その代わり、道上殿は何をしてくれるんですか?

 


道;……。わかった。

       麻呂が他の貴族達にも、お主の行動に目を瞑るように申しておく。

 


晴;ありがとうございます。

       毎日とは難しいですが、毎月…でしたら作るように言っておきましょう。

 


桃;…うわー。えげつなー。

 


晴;ん?美味いもん食べたきゃ俺の行動に文句を言うなって事だ。

       切れるカードで問題を解決しただけさ。

 


桃;カードって…私がつくったのに…。

 


晴;人脈から生きる術をしらない現代人のお前が…

       俺なしで生きれると思ってんのか?

       

桃;う…。それで質問は答えてくれるの?

 


晴;あーそうだったな。なんだ?

 


桃;なんで私がパティシエってわかったの?

 


晴;あー…桃子は料理服で来ただろ?

       料理関係の仕事…もしくは専門学校で学んでいると推測。

       そして、料理服には粉砂糖とカスタードクリームの匂いが…。

       多分、シュークリームでも作ってたんじゃないのかな?

 


桃;あ…あんた何者??

       ずっと考えたら気づくことでも…一瞬で見抜いたの!?

 


晴;あぁ…。俺、心理学を学んでたから。

        こっちでは陰陽道とか言われてるけどな。

 


桃;あぁ…そう言うことか…。

 


晴;じゃあ。桃子。

       これからよろしく♪