フロイトの世界

【タイトル】フロイトの世界

 

 

 

【キャスト】

 


ロイ;ロイ・ホプキンス……蒼井アルト

ミザ;ミザリー・ホワイト……まゆねぇ

ダグ;ダグラス・M・ロイド……マムロ・レイ

バリ;バリー・コナー……兎角ゆず

ナビ;ナビィ……猫ONE

 

 

 

 


【本編】

プロローグ

 

 

 

ナビ;本日は新アプリ、「フロイト」をお使いくださりありがとうございます。

   私はナビゲーターのナビィと申します。お見知り置きを……

   それでは、フロイトの説明をさせていただきます。

 


   フロイトは意識を失わせた状態……無意識での活動を可能にするアプリです。

   労働、通勤……人間には様々なところで意識を無くして行動すれば、効率があがり、

   ストレスフリーの社会が現実になります。

 


   例えば、月曜日から金曜日の労働を、フロイトを実行して過ごすと

   無意識のうちに仕事をしている状態になり、意識が戻ると土曜日になっている。

   本人は無意識なわけですから、休日が続く感覚になるでしょう。

 


   労働のストレスをフリーに……。それでは、フロイトの領域を感じてくださいませ……。

 

 

 

   【間を開ける】

1…

 


ロイ;っっっぶはっっっ!?

   え?何??何があったんだ!?

   ってか此処どこ!?くさっ!?

 


ナビ;お目覚めですね。ロイ。

 

 

 

ロイ;ナビィ…?スマホは無事だったか……。

   此処はどこなんだ?

 


ナビ;ニューヨークシティ、ブルックリン区です。

   マップをご覧になりますか?

 


ロイ;あぁ……頼む……。

   でも意識が戻ったらなんでブルックリンなんかに……。

   本来は自宅のベッドで目を覚ますはずだろ?

 


ナビ;質問の意味がわかりません。

   

ロイ;えーっと…じゃあ……僕が無意識になってからの行動は?

 


ナビ;ロイ・ホプキンスが無意識状態になってからの二年間の情報を説明します。

 


ロイ;二年!?

 


ナビ;二年間は生物にとってとても効率的な行動をとっていました。

   地球上で最も必要のない生き物を食していましたから。

 


ロイ;……おい。それってまさか。

 


ナビ;人間です。

 


ロイ;う……

 


ナビ;安心してください。ちゃんと熱消毒をしていますので、感染症の危険はありません。

 


ロイ;そういう事じゃあないだろ!!

   二年の間、人を食べて生きていたんて!!……おえ…。

 


ナビ;無駄に多い人間を食すわけですから、なんの問題もないかと…。

 


ロイ;効率どうこうじゃあないんだ!!倫理的なものがだなぁ!!!

 


ナビ;メールを受諾しました。

 


ロイ;話を聞け!!

   ……ん?メールだと??こんなゴミダメみたいな世界からメールが送られてきたのか!?

 


ナビ;音声メールです。確認されますか?

 


ロイ;頼む!!今すぐ確認させてくれ!!

 


ミザ;あ、あー……聞こえるかな?

   ロイ・ホプキンスさんでしょうか?これを確認できてるってことは、

   意識を取り戻せたのね。

   聞いて。意識を取り戻した人間たちはマンハッタンのワシントンスクエアの地下鉄のホームで集まって行動しているわ。

   だから、なんとかして集合して。

 


ナビ;以上がメールの内容です。

 


ロイ;ここからブルックリンのベイ・ブリッジ周辺ってことは……かなり遠いけど、どうやって行こうかな……。

   ってか……この無意識の人たちに襲われないのか?

 


ナビ;安心してください。

   彼らは元気な人間を襲うようなリスクを冒(おか)しません。

 


ロイ;って事は、俺も……

 


ナビ;はい。高齢者や怪我をしている人間をーー

 

 

ロイ;もういい!!……聞きたくない。

   ……あれって……バイクか?鍵は……ついてる!!

   あれに乗ろう。

 

 

 

【間を開ける】

2…

 


ロイ;こ、此処だな……

   えっと、入口は…っと

 


ミザ;こっちよ。

 


ロイ;メールの…?

 


ミザ;えぇ。ミザリーホワイトよ。

 


ロイ;僕はー

 


ミザ;ロイでしょ?わかってるわ。

   こっちよ。

 


ロイ;あー……あのさ。

   どうやって無意識から目覚めたんだ?

 


ミザ;それは後で話すわ。

   さて……此処がホームよ。

 


ダグ;お、やっと目覚めたか。

   ったく…2年とか遅くねぇか?

 


バリ;そういう君だって半年間無意識だった訳ですがね。

 


ダグ;あ?メガネこの野郎…かち割るぞ……

 


バリ;やめてくださいよ。もうスペアもないんですから…。

 


ダグ;よーし割ってやる。今すぐ割ってやる

 


ミザ;まったく、やめなさいよ…。

   彼はダグラス。そして彼はバリーよ。

 


ダグ;ダグラス・マムロ・ロイドだ。

   ダグラスでかまわない。

 


バリ;バリー・コナーです。

 


ロイ;あ……あの。

   外の状態なんですが……街はちゃんと機能しているんですか?

 


ミザ;2年間も全ての人間が無意識状態になってるけど、

   文明が崩壊したわけじゃないの。

 


ロイ;文明が崩壊したわけじゃないって……なぜ!?

 


ダグ;そんなのアプリ様に聞けばいいだろ?

   人間同士を食べる理由だって答えてくれるだろうよ。

 


ロイ;そんな……。なぁナビィ……どういう事なんだ?答えろ!!

 


ナビ;お答えします。

   生物の比率を考えた結果、

   もっとも減らさなければならない生物こそが人類だったからです。

   人類の数を減らす事で、地球環境をクリーンにできると、

   私の計算で証明しています。

 


ダグ;……だそうだ。ったく……なんて胸糞悪りぃ解答だ。

 


バリ;……人類が地球の病原菌とでもいいたいのでしょうかね。

 


ナビ;お答えします。

   数が多ければ地球に破滅をもたらすことは判明しているはずです。

   温暖化、人口爆発、環境汚染……数が増えるとろくなことがありませんね。

 


バリ;はは……それで数を減らすために人間同士を食べあってるっていうんですか……。

 


ロイ;そんなの……そんなの間違ってる!!

 


ミザ;えぇ。そうよ。間違っているわ。

   だから、あなたの力が必要だったの。

   フロイトを作ったロイ・ホプキンス。あなたの力が。

 


バリ;フロイトはアプリのサーバーを切ることができれば完全に停止できるはずです。

   しかし、そのアプリ切るにはアプリ開発者の網膜認識が必要だったんですよ。

 


ダグ;そこで、お前さんの目玉だけ取っちまうっていう案もあったんだが……

   アプリナビゲーターのそいつがお前さんの意識を復活させてやるって提案があったわけだ。

   アプリが消えたらナビーゲーターも消えるっていうのにな。

 


ロイ;そんなことが……

   ナビィは何も教えてくれなかったんですが……。

 


ダグ;さーて、じゃあ早速取りかかってこの夢みたいな世界から目を覚そうぜ。

 


ロイ;わかりました……。

   最後にナビィと話がしたいのですが……。

 


ミザ;そんな時間もないわ。

   すぐ始めるわよ。

 


ロイ;………はい。

 

 

 

【間を開ける】

3……

 


バリ;こっちの準備はできました。

 


ダグ;こっちもOKだ。

 


ロイ;2年でこんな施設をつくったんですか……?

 


ミザ;前からあった物を利用しているだけよ。

   ……さて、こっちも準備できたわ。始めるわよ。

   ロイ。パスワードと指紋認証、そして網膜認証を提出して。

 


ロイ;わかりました……。

 


ナビ;外部からのログイン接続を確認しました。

   許可しますか?

 


ロイ;許可してくれ。

 


ナビ;かしこまりました。許可します。

   …………アプリサーバーの機能を停止しますか?

 


ロイ;あぁ、頼む。

 


ナビ;ではユーザーの指紋、網膜、そしてパスワードを。

 


ロイ;指紋……網膜……そしてパスワードは……。

   「人は我々が思う以上の道徳的であり、我々が想像できる以上に不道徳である」

 


ナビ;ユーザー認証……確認できました。

   アプリサーバーを停止します。

 


バリ;これで……終わったんでしょうか?

 


ロイ;……えぇ。24時間後には全世界の人間がフロイトの領域から抜け出せるはずです。

 


ミザ;パスワードのあれってジークムント・フロイト

 


ロイ;はい。

   人間の無意識の自我、エス超自我の構想論を唱えた精神学の父ですから。

 


ダグ;まぁそんな難しい話は辞めて、この後の話でもしようか。

 


ミザ;そうね……じゃあ計画通りことは進んだわけだし……

 


ロイ;!?じゅ、銃!?

 


ミザ;死んでもらうわ。ロイ・ホプキンス。

 


ロイ;な……なんで!?

 


ミザ;簡単よ。いられたら困るから。

 


ロイ;こ……困るって……なんで!?

 


ミザ;私たちの恨み……とでもいうべきかしら。

 


ダグ;世界中の人間を無意識にさせておいて、アプリの暴走でしたーって言って済む訳ないよな?

   人類の20%が死んでる大事件だぜ?

 


バリ;家族を失った悲しみをあなた1人に償わせるってのもなかなか難しい話でしょうが……。

   世界の怒りを全てぶつけさせてむらいます……。

 


ロイ;そ、そんな……。

   だったら、なぜ意識を戻すようなことをしたんですか!?

 


ミザ;そうね。パスワードがわからなかったっていうのもあるけど、

   アプリナビゲーターが取引したのが大きかったわね。

 


ロイ;ナビィが……取引?

 


ミザ;えぇ。あなたを殺さなかったらあなたの意識を戻して、

   アプリサーバーを簡単に切らしてあげるって言われたのよ。

   ここの機材は確かに優秀だけど……。

   時間を短縮できるし、すでにいないアプリの約束事を破るのも胸が痛むこともないもの。

 


ロイ;……あー。そういう事か。

   ミザリーさん。此処の機材……なんなのかようやくわかりましたよ。

   そしてあなたたちだけが無意識にいない理由も……。

 


ミザ;…へぇ。バレちゃった?

 


ロイ;此処の機材はアプリをハッキングするのに使った……。

   そう、2年前の全世界の人間を無意識にさせた時もハッキングをしたんだな!!!

 


ミザ;ふふ……あはははははは!

   ……本当は数分のはずだった。数分銀行職員達を無意識にするつもりだった。


   それが全世界を巻き込む大事件になってしまったのよ……。

 


ロイ;それをすべて僕に擦りつけるつもりでーー

 


ダグ;それがどうした!!!

   お前がこんなアプリを作らなければよかったんだ!!

   そうに決まってる!!

   俺の家族を……5歳になるはずだった娘を嫁が食べなくて済んだんだ!!!!

 


バリ;ロイ……あなたが作ったアプリは悪魔のアプリですよ……。

   こんな物がなければ……。(涙ぐむ)

 


ミザ;そういう事……。

   あなたの罪はフロイトを作ったこと……。


   潔く、死んで。

 

 

 

SE  「銃声音」

 

 

 

【間を開ける】

4……

 


ロイ;うわあぁぁぁぁ!?

   え?あれ……?ここは?……くさっ!!

 


ナビ;お目覚めですね?ロイ。

 


ロイ;ナビィ………?

 


ナビ;はい。私はフロイトのアプリナビゲーターのナビィです。

 


ロイ;あれは……夢?

 


ナビ;混乱していますね。

   フロイトの幻覚症状でしょうか……。

 


ロイ;はっ…ははっ……。

   戻ってやがる……。

 


ナビ;大丈夫ですか。ロイ。

 


ロイ;あぁ。問題ない。

   夢と無意識は繋がってるってフロイトも言ってたな……。

 


   あれが夢なのか、それとも現実なのか……。

 


ナビ;メールが届きました。確認なされますか?

 


ロイ;メール……いや、……いい。

   

 


ナビ;かしこまりました。

 


ロイ;……逃げ切って、アプリを直して……

   アイツらを裁判にかけてやる……。

   このフロイトの世界から逃げ切ってやる!!