箱庭事件簿

声劇台本【箱庭事件簿】

 

 

 

配役 (3;3)

 


探偵…桐生院 亞里亞(きりゅういん ありあ)

 


フレ…フレンド

 


直寿(なおひさ)

 


麗子(れいこ)

 


富永(とみなが)

 


レイ…レイチェル

 

 

 

 


【本編】

 

 

 

探偵;……あれ。此処は……何処?

 


フレ;やぁ、お目覚めかな。桐生院 亞里亞くん。

 


探偵;!?誰なの!?

 


フレ;んー……そんな台詞じゃあカッコ悪くて話にならないな。

   君はこれから僕の対戦相手になるんだから。

 


探偵;はぁ!?

   一体何言ってーー

 


フレ;(切るように)君は探偵ではあるが、探偵に必要なスキルを所持していない。

   推理力や洞察力よりも大切な物……殺人現場に遭遇するという……死神としてのスキルがね。

 


探偵;……船や列車、乗り物に乗ったり、レジャーに行ったら人が死ぬっていうジンクスのこと?

 


フレ;それが名探偵と普通の探偵の違いと言えるだろうね。

   では……何故僕がそんな事を君に話しているかと言うと。

   ……えっとわからないかい?

 


探偵;え?何が?

 


フレ;(ため息)君には想像力というのは無いのかい?

   まぁ……現実的ではないけど、僕の存在は非現実的と言っても過言じゃあないからなぁ……。

   それなら仕方ないか。

   僕のことを理解して貰うしかないかな。

 


   ……僕は死神であり、悪魔であり、天使だ。

 


探偵;……は?

 


フレ;ほらほら、脳の回転を止めちゃあ駄目だよ。

   僕は名前の無い非現実的な化物。そんな化物が君を名探偵にさせてあげるって言っているんだよ。

 


探偵;あー……馬鹿馬鹿しくて脳が思考停止してしまったわ……。

   でも……そんな嘘を言う為に私を見知らぬ場所に連れて来る意味がわからないわ。

   行動に意味がなさすぎる。

 


フレ;あ、信じてくれる?

   よかったぁー……化物の証拠を見せろって言われたら、君を殺さなければならなかったからねー。

 


探偵;……そ、そうなんだ…。

 


フレ;まぁ君を呼んだのは、超簡単。

   僕と楽しいゲームをして、君が勝ったら名探偵にしてあげる。

 


探偵;ちょっと待って。

   さっき言ってた名探偵のスキルなんだけど、殺人事件に遭遇してしまう体質になるってこと?

   それってどうやったらなれるのよ。

 


フレ;それはね……名探偵と呼ばれる者達には、死神がついてるからだよ。

   あ、比喩じゃあないよ。本当に死神がついているんだ。

   死神が殺人事件を招く。そして探偵がその事件を解決する。

   まぁ、事件を解決しないと、死神に殺されるから文字通り命懸けだよね。ははは。

 


探偵;あ、そんな命懸けで名探偵になりたくないから辞退します。

 


フレ;辞退?

   ……そんなこと、出来るわけ、無いじゃあないか。

   桐生院 亞里亞。お前は今、喉元にナイフを突き付けられてる状態と変わらないんだ。

 


   さぁ、ゲームを始めよう…。

   負けて此処で殺されるか。

   それとも、生きて名探偵として死ぬまで僕に命を狙われるか。

 


探偵;……わかったわ。

   ゲームに参加する。

   でも、ゲームって一体何をするのよ?

 


フレ;推理ゲームさ。目の前に箱庭が見えるだろ?

   この箱庭で今から殺人事件が起こる。

   君はその事件を解決できたら勝ち。出来なければ負け。簡単だろ?

 


探偵;簡単ね……。

   こっちはプレッシャーに押し潰されて、今にも死にそうだっての……。

 


フレ;ふふ…そう言いながらも、素敵な笑顔を見せる君はとても素敵だよ。

 


探偵;あ……。一つ質問。

 


フレ;ん?何かな?

 


探偵;あなたの名前だけど……。さっき名前の無い化物って言ってたわよね?

 


フレ;うん。僕には名前がない。

   それがどうかした?

 


探偵;じゃあ、あなたの事は何て呼べばいいの?

 


フレ;んー。そうだなあ。「フレンド」。

   友達と気軽に呼んでくれないかい?

 


探偵;皮肉にも程があるわよ。命を狙う友達って……。

 


フレ;まぁいいじゃないか。

   さて……それじゃあ始めよう。

   舞台は二十世紀のミステリーブーム!!嵐の中に閉じ込められた孤島。

   1人の男がロープで首を吊っている所から始まる…。

 

 

 

【間を開ける】 ※5秒程度

 

 

 

レイ;きゃああああ!!

   だ、旦那様!?

 


直寿;どうしたんだ!?

   お……親父!?

 


麗子;まったく何を騒いで……お父さん…?

 


富永;だ…旦那様…!!

   は、早くロープから下さなくては!!

 


探偵;駄目よ!!

   これ以上現場を荒らす事は禁ずるわ!!

 


直寿;あ……アンタは一体!?

 


探偵;自己紹介をさせて貰うわ…。

   私は桐生院 亞里亞。私立探偵よ。

 


直寿;た……探偵!?

 


麗子;だ、誰よ部外者を此処に連れて来たのは!!

 


富永;す、すみません!!

   先程船の様子を見に行った時に、この方が波打際(なみうちぎわ)で流されておりまして……。

 


探偵;いや、ちょっと待って!!

 


フレ;え?まだ何も手掛かりも無いのに解決できたのかい??

 


探偵;いや、そうじゃなくて……。

   まず、この箱庭になんで私がいるのよ!!

   あと、何で孤島に流されてるのよ!!

 


フレ;細かい事はいいじゃないか。

   孤島に流れ着いたら殺人事件が起こってしまった。それだけだよ。

 


   あと、この箱庭の人間は人形であって、実際の人物とは一切関係ないから安心してね。

 


探偵;まぁ……いいわ。

   えっと。人形達には名前はあるの?

 


フレ;では、登場人物を紹介しよう。

   まずは被害者。金田剛造(かねだごうぞう)はこの孤島に屋敷を持つ人物で。

   幾つか会社を経営している。

 


   次に最初に第一目撃者のレイチェル。この屋敷のメイドだね。

   第二目撃者は剛造の息子、金田直寿(かねだなおひさ)。

   その後にやって来たのは娘の麗子。2人は屋敷には住んでないんだけど、

   家族総会があって、やって来たってところかな。

 


   最後に、探偵、桐生院と一緒にいたのは執事の富永。さぁ、この謎が解けるか??

 


探偵;いや、名前だけ教えて貰っても犯人なんてわかるわけないでしょ…。

   うーん……これって箱庭の探偵は動かせるの?

 


フレ;うん。話しかけたり、調べたりするのは出来るよ。

 


探偵;なるほどね…だったら……。

 


   私の事はいいんです!此処は殺人現場になっている可能性があります!!

   ひとまず、皆さんはこの部屋から出て行ってください!!

 


直寿;そうは言っても……。

   親父をあのままには……。

 


麗子;そ、そうよ…あのまま首を吊ったままってのは可哀想だわ……。

 


探偵;お気持ちは分かります。

   ですが、どうか抑えてください。

   誰かに殺害された場合、犯人の証拠が消えてしまうかもしれません。

 


直寿;……わかった。

   ここは探偵さんの言う通りにしてやろう。

 


麗子;でも……。

 


直寿;これ以上何かしたら、犯人だって思われちまうぜ?

 


麗子;なっ!?

   殺したのは兄さんでしょ!?

 


直寿;はぁ?

   なんで俺が親父を殺さないといけないんだよ!!

 


富永;直寿様、麗子様……どうか落ち着いてください…。

 


直寿;落ち着けだ?

   おい富永……こんな状況でよく落ち着けなんて言えるなおい!!

   お前が殺したのか?

 


富永;と、とんでもない!!

   私は30年も旦那様に忠義をーー

 


麗子;忠義ねぇ……我慢の限界で、グイッと殺しちゃったんじゃあないの?

 


富永;麗子様まで…!!

 


麗子;それに……レイチェルもレイチェルよ…。

   怯えたフリなんかしちゃって。

 


レイ;そ……そんな……私は…。

 


直寿;レイチェルは関係ないだろ!!

 


麗子;そうよねー!

   アンタ達は婚約してるんだから兄さんもレイチェルを味方するわよね!!

 


探偵;そこまで!!

   話の続きは部屋の外でやってください!!

 

 

 

【間を開ける】

 

 

 

フレ;……とまぁ、こんな感じに事件が発覚したわけだ。

   お茶飲む?緑茶紅茶珈琲その他諸々お茶菓子も揃っているよ?

 


探偵;じゃあ……チータラとブラック珈琲。

 


フレ;え?チータラ?ブラック珈琲に合うの?

 


探偵;合う合わないじゃなくて、珈琲はカフェインが入ってて頭が回りやすいのよ。

 


フレ;じゃあチータラは?

 


探偵;……私が好きだから…。

 


フレ;ふふ……可愛いとこあるじゃあないの!!

   好きな食べ物がチータラ……なんかおじさんみたいだね!!

 


探偵;うるさいわね……あるの?ないの?

 


フレ;残念ながらあるんだな。

   ブラック珈琲はインドネシア産のコピ・ルアクに、チータラは北海道の函館から取り寄せた物をだそう。

 


探偵;どうもありがと。(もぐもぐ)

   んー♪美味しいわねこれ!!

 


フレ;さて、事件現場の状況はこんな感じ。

   ドアの鍵はかかっていて、窓も同様に閉まっていて、中はプチ密室だったわけだ。

 


探偵;ん?プチ密室ってどういうこと?

 


フレ;あぁ、メイドのレイチェルが合鍵を持っているんだよ。

   執事の富永は老体だから、食事やら雑用やらは基本的にレイチェルがやっていたんだ。

 


探偵;なるほどね……。

   ちなみに、首を吊ったロープだけど……。結び方はどんな感じ?

 


フレ;どんな感じ?ってどういう事?

 


探偵;結び目の紐はは右下がりなの?左下がりなの?

 


フレ;あぁ、左下がりだよ。

 


探偵;ふーん……じゃあ遺体の利腕は?

 


フレ;右利きだよ。

 


探偵;じゃあこれは殺人事件ね。自殺じゃあないわ。

 


フレ;まぁ、お約束だよね。

   右利きと左利きだと結び方が異なるから。

 


探偵;ってことは犯人だけど……

 


フレ;質問はいくらでもしていいよ。

   犯人は誰?って言うの以外ならね。

 


探偵;じゃあ、左利きの人は?

 


フレ;息子の直寿、メイドのレイチェル。そして執事の富永だね。

 


探偵;左利きなのに多いわね……。

   じゃあこの中で被害者を殺しそうな動機を持ってる人は?

 


フレ;動機だけなら皆あるさ。

   直寿とレイチェルは結婚を反対されてたし、麗子は多額の借金がある。

   執事は仕事のストレスを散々抱えているからねー。

 


   さて……君にはこんな推理ゲーム簡単だったかな?

 


探偵;ふざけないで。まだ何も解ってないじゃないの。

   部屋の扉と窓には鍵が。

   鍵を持っているのは、ひ弱なメイドただ1人。

   男性をロープに吊すなんて、出来るわけがない。

 


   被害者の死亡推定時刻はどれくらいなの?

 


フレ;ふふ…。この場に医者はいないから正確な時間はわからないよ。

   まぁ、こんな感じで調べるってのはどうだい?

 

 

 

【間を開ける】

 


探偵;まだ推理の途中ですが、この事件は殺人事件と判断します。

 


直寿;そんな……。

   親父がこの誰かに殺されたってことなのか!?

 


探偵;断定はまだできません。

   もしかしたら、別の人物。犯人X(えっくす)が存在するかも……。

   

直寿;お、俺らが親父を殺すわけないだろ!?

   多分別の奴が犯人なんだよ!!

 


探偵;えぇ…。ですが、犯人Xの可能性は比較的0に近いと思います。

   だから、皆さんが最後にお父様にお会いしたのは何時くらいでしょうか?

 


直寿;親父に最後に会ったのは……夕食を食べた6時くらいだな。

   レイチェル以外は皆それくらいの時間だと思う。

 


麗子;あ……私は7時。

   お父様に会いに行ったわ。その時はちゃんと生きてたわ。

 


直寿;麗子……親父に何か用だったのか?

 


麗子;う……うん。

   ちょっとね。……お金を借りようと……。

 


直寿;またかよ!?

   どんだけ借りてんだよ!!

 


麗子;しょうがないでしょ!!

   経営にはお金がかかるんだから!!

 


直寿;金がかかる……?そんなの仕事とは言わねんだよ!!

   なぁ……お前が殺したんじゃねぇのか??

 


麗子;はぁ!?ふざけんじゃないわよ!!

   私が部屋に行った時にはまだ生きてたんだから、兄さんの婚約者のほうが怪しいじゃない!!

 


直寿;レイチェルは関係ないだろ!!

 


麗子;それはどうかしらね!!

 


探偵;ちょっと落ち着いてください!!

   麗子さん、どういう事ですか?

 


麗子;……(ため息)最後にお父様に会ったのは、メイドのレイチェルだからよ。

   珈琲を持って行くっていってたわ。

 


探偵;レイチェルさん。それは本当ですか?

 


レイ;……はい。

   旦那様はいつも19時半と21時半に珈琲を……。

 


探偵;私たちが遺体を発見したのは、21時40分。

   という事は、19時半から21時半までの2時間の間に殺されたと…。

   では、その時間に皆さんは何をしていましたか?

 

 

 

富永;では……私が説明を…。

   夕食後は直寿様と麗子様はリビングでくつろいでいらっしゃいました。

   その後は麗子様が席を立たれたので、レイチェルと私は屋敷の仕事をしておりました。

 


探偵;屋敷の仕事というのは?

 


富永;私は嵐で船が流されてないか確認と、風で何か飛ばされてないか確認を……。

 


レイ;私も明日の朝食の材料と無くなった材料を保管庫から取りに行ってました。

 


探偵;保管庫とは?

 


レイ;外の離れにあります。

 


探偵;そう……ですか。

 

 

 

【間を開ける】

 

 

 

フレ;……と、言う事で。

   容疑者のアリバイはこんな感じになるよ。

 


探偵;ねぇ、首をロープで締めるって、ひ弱な女性や老人にできたりする?

 


フレ;まぁ普通は出来ないよねー。

   ロープを引く力が物凄く強くないと、暴れられて逆に殺されかねないね。

 


探偵;そうよねー…。

   あ、その保管庫ってどれくらい遠いの?

 


フレ;保管庫はここから50メートル先にあるよ。

 


探偵;じゃあ……ここね。

 


フレ;そうそう。そこだよー。

 


探偵;……ねぇ。ここって…。

   水車?

 


フレ;ん?保管庫だよ?

 


探偵;いや、保管庫の隣にある……。

 


フレ;あぁ、そこでは水力発電もやっててね。

   屋敷の電力の一部はここで保っているんだよ。

   あとは小麦粉を作ったりもしてるから保管庫の近くにつくっているみたいだね。

 


探偵;ふーん。あとは……。

   もう一度犯行現場の探索ってできるかしら?

 


フレ;ん?何かわかったのかい?

 


探偵;まぁ……もしかしたらね。

 


フレ;では……探索してみよう。

 


探偵;必要なのは2点。

   被害者の首のロープの痕(あと)は?

 


フレ;ロープの痕?

 


探偵;2つない?

 


フレ;ふふ……。あるよ。

 


探偵;やっぱり…。

   じゃあ次にロープの吊し方は?

 


フレ;天井の柱に紐を通して、床に固定されている家具に縛られているね。

 


探偵;そのロープはどこかで別の結び目がない?

 


フレ;へぇ……まるで見ているようだね。

   あるよ。

 


探偵;……解けたわ。

 


フレ;おーお見事!!

   流石は名探偵(仮)!!

 


探偵;なによ(仮)って…。

 


フレ;その推理が正解だったら外してあげるよ。

   それまでは、(仮)は外せないな。

 


探偵;じゃあ死にたくないし、言語化するわよ。

 


フレ;あー。でもちょっとまって。

   名探偵たるもの謎が解けた時の名台詞って必要だと思わない??

 


探偵;解けたじゃダメなの?

 


フレ;駄目だよー。

   それじゃあパートナーの僕が笑われてしまう。

 


探偵;じゃあ……。

 

 

 

【間を開ける】

 

 

 

麗子;探偵さん!!

   犯人が見つかったって本当!?

 


探偵;えぇ。私の命をかけてもいいわ。謎は解けています。

 


麗子;え?……命?

 


探偵;あぁ、気にしないで。

   事件の概要はこうです。

   犯人は剛造さんに睡眠薬を入れて、ロープに首を括らせ締め殺す。

   まぁ、単純に言えばこうなります。

 


直寿;おいおい……その言い方だと、俺が犯人って言われそうだな!!

   俺は親父を殺していないぞ!!

 


探偵;えぇ。ロープに吊すのであれば、女性やご老体には殺害は無理でしょう。

   ですが、あるトリックを使えば誰でも犯行が可能です。

 


富永;トリック……ですか?

 


探偵;えぇ。そのトリックは3本のロープで解決します。

   眠らせた剛造さんの首にロープを括らせた後、

   犯人は保管庫の隣にある水車にロープを結び、巻き取らせ、首を絞めた。

   その後別のロープを結び、床に固定された家具に紐を結ぶ。

   最後に水車のロープを切れば……ロープは水車に巻き取らせば誰でも犯行が可能になります。

 


直寿;3本のロープを結ぶって……そう簡単にできるわけがない!!

   やっぱり犯人Xが……

 


探偵;テグス結びと、本結びってご存知?

 


直寿;てぐ?……え?本結び?

 


探偵;テグス結びは釣りをする時に使う結び方。

   そして本結びはハンモックを結ぶ方法……。

   こんな孤島に住んでいるわけですから、

   使用人達はこれらの結び方を知っているはずです。

 


   そして、水車は保管庫の隣にあるわけだから…。

   犯人は……あなたです。メイドのレイチェルさん。

 


レイ;……え?

   そ、そんな私…旦那様を殺してなんか

 


直寿;そうだ!!レイチェルがそんなことするわけないだろ!!

   それにそんな推測……

 


探偵;まず、このトリックの問題は2つ。

   ロープを切る時に遺体が数センチ落ちてしまい、ロープの痕が二つになってしまう。

   そして、水車のロープには……証拠が残ってしまう。

   水車にむかいましょう。

   そこには証拠になった長いロープがあるはずです。

 


レイ;いいわ。行かなくて。

   あーあ……鍵を持っていれば怪しくて犯人じゃないと思うと思ったのになー。

 


直寿;レイチェル……どう言うことなんだ!?

 


レイ;どう言うこと?

   ……本当に何も知らないのね。

   あの男はね……私の父親なのよ。

 


直寿;父…親?

 


レイ;えぇ。だから私たち兄妹(きょうだい)なの。

   ……あの男は私の母親を愛人にして、私が出来た途端に捨てたの。

 


   私は復讐を果たす為にこの屋敷に忍び込んだ。

   本当に馬鹿な男だったわ……。まさか娘の私を襲おうとするんだから。

   息子も息子よ…。アンタは自分の父親と同じ過ちをしようとしたんだから……。

 


直寿;お……俺は真剣に…。

 


レイ;いいえ。私知ってるの。

   あなたには許嫁がいて、まだ婚約とは解消してないんでしょ?

 


   私と許嫁を天秤にかけるなんて……本当に最低な男。

 


直寿;そ……それは…。

 


レイ;……もういいわ。

   本当は私の罪をあなたに擦りつけようとしたのに…。

   まぁ、仕方ないわね。

 


探偵;ちょっといいですか?

 


レイ;……なによ。

 


探偵;レイチェルさん。

   この事件なんですが……。まだ解決出来てないことがありますよね。

 


レイ;もういいじゃない。

   私が犯人…それでいいじゃない。

 


探偵;いえ……なぜあなたが首吊りなんて証拠の残る犯行をしたのか。

   それはすぐにわかりました。

 


   たった1人だけ、容疑者に上がらない人物がいました。

   それは……。妹を容疑者から外させたかったから……ですよね。

 


麗子;それって……私のこと?

 


探偵;そうなりますね。

   あなたを守る為に、自分を疑われるかもしれない犯行をした。

   

 


   ……って事でいいのかしら?

 

 

 

【間を開ける】

 


フレ;ブラボー!!ブラーボー!!

   見事犯人を当てたね!!

   いやー!感動した!!

 


探偵;なーにが感動したよ……。

   結局鍵を持ってた人が犯人だったじゃない。

 


フレ;それは試験の推理問題で、一番怪しい奴が犯人だと思わないじゃないか。

   答えはシンプルだったら面白くない。

   だけど、真実って言うのはシンプルなもんさ。

 


探偵;シンプルね…。箱庭とはいえ、人が死んだのに……

 


フレ;おやおや。これから人が何人も死ぬんだよ?

 


   そんなじゃあ……名探偵になったとしても精神が持たないぜ?

   なぁ桐生院亞里亞

   ……お前は、これから何度もこの俺に殺されるんだ。

   その恐怖に耐えれるか?

 


探偵;耐える?

   ……フレンズ。あなたは誤解をしているわね。

   私は名探偵の資格として、死神をパートナーにしたのよ?

   逆にあなたを仕事で過労死するくらい事件を解決してやるわよ。

 


フレ;ふふ……死である僕を過労死って…ふふ…ふはははははは!!!

   いいねぇ……君。気に入ったよ。

   それでこそ僕のパートナーだ……。

 


   では、外に出て本物の事件に出逢いに行こう。

 

 

 

 


【終】

フロイトの世界

【タイトル】フロイトの世界

 

 

 

【キャスト】

 


ロイ;ロイ・ホプキンス……蒼井アルト

ミザ;ミザリー・ホワイト……まゆねぇ

ダグ;ダグラス・M・ロイド……マムロ・レイ

バリ;バリー・コナー……兎角ゆず

ナビ;ナビィ……猫ONE

 

 

 

 


【本編】

プロローグ

 

 

 

ナビ;本日は新アプリ、「フロイト」をお使いくださりありがとうございます。

   私はナビゲーターのナビィと申します。お見知り置きを……

   それでは、フロイトの説明をさせていただきます。

 


   フロイトは意識を失わせた状態……無意識での活動を可能にするアプリです。

   労働、通勤……人間には様々なところで意識を無くして行動すれば、効率があがり、

   ストレスフリーの社会が現実になります。

 


   例えば、月曜日から金曜日の労働を、フロイトを実行して過ごすと

   無意識のうちに仕事をしている状態になり、意識が戻ると土曜日になっている。

   本人は無意識なわけですから、休日が続く感覚になるでしょう。

 


   労働のストレスをフリーに……。それでは、フロイトの領域を感じてくださいませ……。

 

 

 

   【間を開ける】

1…

 


ロイ;っっっぶはっっっ!?

   え?何??何があったんだ!?

   ってか此処どこ!?くさっ!?

 


ナビ;お目覚めですね。ロイ。

 

 

 

ロイ;ナビィ…?スマホは無事だったか……。

   此処はどこなんだ?

 


ナビ;ニューヨークシティ、ブルックリン区です。

   マップをご覧になりますか?

 


ロイ;あぁ……頼む……。

   でも意識が戻ったらなんでブルックリンなんかに……。

   本来は自宅のベッドで目を覚ますはずだろ?

 


ナビ;質問の意味がわかりません。

   

ロイ;えーっと…じゃあ……僕が無意識になってからの行動は?

 


ナビ;ロイ・ホプキンスが無意識状態になってからの二年間の情報を説明します。

 


ロイ;二年!?

 


ナビ;二年間は生物にとってとても効率的な行動をとっていました。

   地球上で最も必要のない生き物を食していましたから。

 


ロイ;……おい。それってまさか。

 


ナビ;人間です。

 


ロイ;う……

 


ナビ;安心してください。ちゃんと熱消毒をしていますので、感染症の危険はありません。

 


ロイ;そういう事じゃあないだろ!!

   二年の間、人を食べて生きていたんて!!……おえ…。

 


ナビ;無駄に多い人間を食すわけですから、なんの問題もないかと…。

 


ロイ;効率どうこうじゃあないんだ!!倫理的なものがだなぁ!!!

 


ナビ;メールを受諾しました。

 


ロイ;話を聞け!!

   ……ん?メールだと??こんなゴミダメみたいな世界からメールが送られてきたのか!?

 


ナビ;音声メールです。確認されますか?

 


ロイ;頼む!!今すぐ確認させてくれ!!

 


ミザ;あ、あー……聞こえるかな?

   ロイ・ホプキンスさんでしょうか?これを確認できてるってことは、

   意識を取り戻せたのね。

   聞いて。意識を取り戻した人間たちはマンハッタンのワシントンスクエアの地下鉄のホームで集まって行動しているわ。

   だから、なんとかして集合して。

 


ナビ;以上がメールの内容です。

 


ロイ;ここからブルックリンのベイ・ブリッジ周辺ってことは……かなり遠いけど、どうやって行こうかな……。

   ってか……この無意識の人たちに襲われないのか?

 


ナビ;安心してください。

   彼らは元気な人間を襲うようなリスクを冒(おか)しません。

 


ロイ;って事は、俺も……

 


ナビ;はい。高齢者や怪我をしている人間をーー

 

 

ロイ;もういい!!……聞きたくない。

   ……あれって……バイクか?鍵は……ついてる!!

   あれに乗ろう。

 

 

 

【間を開ける】

2…

 


ロイ;こ、此処だな……

   えっと、入口は…っと

 


ミザ;こっちよ。

 


ロイ;メールの…?

 


ミザ;えぇ。ミザリーホワイトよ。

 


ロイ;僕はー

 


ミザ;ロイでしょ?わかってるわ。

   こっちよ。

 


ロイ;あー……あのさ。

   どうやって無意識から目覚めたんだ?

 


ミザ;それは後で話すわ。

   さて……此処がホームよ。

 


ダグ;お、やっと目覚めたか。

   ったく…2年とか遅くねぇか?

 


バリ;そういう君だって半年間無意識だった訳ですがね。

 


ダグ;あ?メガネこの野郎…かち割るぞ……

 


バリ;やめてくださいよ。もうスペアもないんですから…。

 


ダグ;よーし割ってやる。今すぐ割ってやる

 


ミザ;まったく、やめなさいよ…。

   彼はダグラス。そして彼はバリーよ。

 


ダグ;ダグラス・マムロ・ロイドだ。

   ダグラスでかまわない。

 


バリ;バリー・コナーです。

 


ロイ;あ……あの。

   外の状態なんですが……街はちゃんと機能しているんですか?

 


ミザ;2年間も全ての人間が無意識状態になってるけど、

   文明が崩壊したわけじゃないの。

 


ロイ;文明が崩壊したわけじゃないって……なぜ!?

 


ダグ;そんなのアプリ様に聞けばいいだろ?

   人間同士を食べる理由だって答えてくれるだろうよ。

 


ロイ;そんな……。なぁナビィ……どういう事なんだ?答えろ!!

 


ナビ;お答えします。

   生物の比率を考えた結果、

   もっとも減らさなければならない生物こそが人類だったからです。

   人類の数を減らす事で、地球環境をクリーンにできると、

   私の計算で証明しています。

 


ダグ;……だそうだ。ったく……なんて胸糞悪りぃ解答だ。

 


バリ;……人類が地球の病原菌とでもいいたいのでしょうかね。

 


ナビ;お答えします。

   数が多ければ地球に破滅をもたらすことは判明しているはずです。

   温暖化、人口爆発、環境汚染……数が増えるとろくなことがありませんね。

 


バリ;はは……それで数を減らすために人間同士を食べあってるっていうんですか……。

 


ロイ;そんなの……そんなの間違ってる!!

 


ミザ;えぇ。そうよ。間違っているわ。

   だから、あなたの力が必要だったの。

   フロイトを作ったロイ・ホプキンス。あなたの力が。

 


バリ;フロイトはアプリのサーバーを切ることができれば完全に停止できるはずです。

   しかし、そのアプリ切るにはアプリ開発者の網膜認識が必要だったんですよ。

 


ダグ;そこで、お前さんの目玉だけ取っちまうっていう案もあったんだが……

   アプリナビゲーターのそいつがお前さんの意識を復活させてやるって提案があったわけだ。

   アプリが消えたらナビーゲーターも消えるっていうのにな。

 


ロイ;そんなことが……

   ナビィは何も教えてくれなかったんですが……。

 


ダグ;さーて、じゃあ早速取りかかってこの夢みたいな世界から目を覚そうぜ。

 


ロイ;わかりました……。

   最後にナビィと話がしたいのですが……。

 


ミザ;そんな時間もないわ。

   すぐ始めるわよ。

 


ロイ;………はい。

 

 

 

【間を開ける】

3……

 


バリ;こっちの準備はできました。

 


ダグ;こっちもOKだ。

 


ロイ;2年でこんな施設をつくったんですか……?

 


ミザ;前からあった物を利用しているだけよ。

   ……さて、こっちも準備できたわ。始めるわよ。

   ロイ。パスワードと指紋認証、そして網膜認証を提出して。

 


ロイ;わかりました……。

 


ナビ;外部からのログイン接続を確認しました。

   許可しますか?

 


ロイ;許可してくれ。

 


ナビ;かしこまりました。許可します。

   …………アプリサーバーの機能を停止しますか?

 


ロイ;あぁ、頼む。

 


ナビ;ではユーザーの指紋、網膜、そしてパスワードを。

 


ロイ;指紋……網膜……そしてパスワードは……。

   「人は我々が思う以上の道徳的であり、我々が想像できる以上に不道徳である」

 


ナビ;ユーザー認証……確認できました。

   アプリサーバーを停止します。

 


バリ;これで……終わったんでしょうか?

 


ロイ;……えぇ。24時間後には全世界の人間がフロイトの領域から抜け出せるはずです。

 


ミザ;パスワードのあれってジークムント・フロイト

 


ロイ;はい。

   人間の無意識の自我、エス超自我の構想論を唱えた精神学の父ですから。

 


ダグ;まぁそんな難しい話は辞めて、この後の話でもしようか。

 


ミザ;そうね……じゃあ計画通りことは進んだわけだし……

 


ロイ;!?じゅ、銃!?

 


ミザ;死んでもらうわ。ロイ・ホプキンス。

 


ロイ;な……なんで!?

 


ミザ;簡単よ。いられたら困るから。

 


ロイ;こ……困るって……なんで!?

 


ミザ;私たちの恨み……とでもいうべきかしら。

 


ダグ;世界中の人間を無意識にさせておいて、アプリの暴走でしたーって言って済む訳ないよな?

   人類の20%が死んでる大事件だぜ?

 


バリ;家族を失った悲しみをあなた1人に償わせるってのもなかなか難しい話でしょうが……。

   世界の怒りを全てぶつけさせてむらいます……。

 


ロイ;そ、そんな……。

   だったら、なぜ意識を戻すようなことをしたんですか!?

 


ミザ;そうね。パスワードがわからなかったっていうのもあるけど、

   アプリナビゲーターが取引したのが大きかったわね。

 


ロイ;ナビィが……取引?

 


ミザ;えぇ。あなたを殺さなかったらあなたの意識を戻して、

   アプリサーバーを簡単に切らしてあげるって言われたのよ。

   ここの機材は確かに優秀だけど……。

   時間を短縮できるし、すでにいないアプリの約束事を破るのも胸が痛むこともないもの。

 


ロイ;……あー。そういう事か。

   ミザリーさん。此処の機材……なんなのかようやくわかりましたよ。

   そしてあなたたちだけが無意識にいない理由も……。

 


ミザ;…へぇ。バレちゃった?

 


ロイ;此処の機材はアプリをハッキングするのに使った……。

   そう、2年前の全世界の人間を無意識にさせた時もハッキングをしたんだな!!!

 


ミザ;ふふ……あはははははは!

   ……本当は数分のはずだった。数分銀行職員達を無意識にするつもりだった。


   それが全世界を巻き込む大事件になってしまったのよ……。

 


ロイ;それをすべて僕に擦りつけるつもりでーー

 


ダグ;それがどうした!!!

   お前がこんなアプリを作らなければよかったんだ!!

   そうに決まってる!!

   俺の家族を……5歳になるはずだった娘を嫁が食べなくて済んだんだ!!!!

 


バリ;ロイ……あなたが作ったアプリは悪魔のアプリですよ……。

   こんな物がなければ……。(涙ぐむ)

 


ミザ;そういう事……。

   あなたの罪はフロイトを作ったこと……。


   潔く、死んで。

 

 

 

SE  「銃声音」

 

 

 

【間を開ける】

4……

 


ロイ;うわあぁぁぁぁ!?

   え?あれ……?ここは?……くさっ!!

 


ナビ;お目覚めですね?ロイ。

 


ロイ;ナビィ………?

 


ナビ;はい。私はフロイトのアプリナビゲーターのナビィです。

 


ロイ;あれは……夢?

 


ナビ;混乱していますね。

   フロイトの幻覚症状でしょうか……。

 


ロイ;はっ…ははっ……。

   戻ってやがる……。

 


ナビ;大丈夫ですか。ロイ。

 


ロイ;あぁ。問題ない。

   夢と無意識は繋がってるってフロイトも言ってたな……。

 


   あれが夢なのか、それとも現実なのか……。

 


ナビ;メールが届きました。確認なされますか?

 


ロイ;メール……いや、……いい。

   

 


ナビ;かしこまりました。

 


ロイ;……逃げ切って、アプリを直して……

   アイツらを裁判にかけてやる……。

   このフロイトの世界から逃げ切ってやる!!

ACT入団テスト声劇台本(男性用)

ACT入団テスト声劇台本(男性用)

 

 

 

この台本は非公式声劇団体「ACT」の入団試験の題材でございます。

Twitterに投稿し、名前、年齢(未成年、又は成人済み)、性別を書き込んでください。

 


【本編】

 


勇敢なる戦士達よ!我が同胞達よ!!

賽は投げられた!!

 


我々は幾度となく煮湯(にえゆ)を飲まされて来た!!

 


思い出せ!!

両親を殺された怒りを!!

女こどもを取られ、奴隷のような扱いをされた憎しみを!!

 


我々の怒りは強靭な刃となり、敵の喉元(のどもと)を掻っ切るであろう!!

我々の憎しみは鋭利な槍となり、敵の心臓を一突きにするであろう!!

 

 

 

勇敢なる戦士たちよ!我が同胞達よ!!

答えるのだ!!

 


敵を切り刻み、両親の怨みを晴らしたいか!?

敵を地面に捻じ伏せ、奴らと同じように大切な物を目の前で奪ってやりたいか!?

 


これは戦争では断じてない!!

力で敵を粉砕し、蹂躙(じゅうりん)し、虐殺する……一方的な暴力だ。

 


さぁ……奴らの死体の山を築くのだ!!

 


勝ち鬨をあげよぉぉぉぉぉぉ!!

 

ACT入団テスト声劇台本(女性用)

ACT入団テスト用声劇台本(女性用)

 

 

 

この台本は非公式声劇団体「ACT」の入団試験の題材でございます。

Twitterに投稿し、名前、年齢(未成年、又は成人済み)、性別を書き込んでください。

 


【本編】

 

 

 

量子力学ファインマン氏の実験は皆さまご存知だと思いますが…。

 


二重スリット実験の説明からさせていただきます。

 


電子銃を反射させて、写真乾板(しゃしんかんぱん)に到達させる間に二重のスリットがある板を置いた実験ですが、

このとき、観測すると点の動きをする電子が、観測しなかった場合のみ、波の動きをするという結果がでました。

 


これから導き出される答えとして、

電子は自らの意思があって、我々に電子の動きを見せないようにするという……

我々を観測する何者かがいるという推測ができます。

 


……やはり笑いましたか。

 


いえ、いいんです。笑われるのもわかった上でのこの説明だったので。

実は、観測者が何者なのかとか。人間原理を説こう(とこう)なんて1ミクロンたりとも気にしてません。

 


私がここでお話ししたかったのは、その電子の動きで生命を誕生させる実験結果についてです。

 


まぁ…電子人間とでも名乗っておきましょうか。

今ここで見せろと言うのであれば、お見せします。

 


実は、私が電子人間なのですよ。まぬけな科学者さん達♪

 

平安のパティシエール

【タイトル】

平安のパティシエール

 


【配役】

2;1;0

 


桃;斎藤 桃子(さいとう ももこ)女

洋菓子の専門学校所属の20歳。

 

 

 

晴;安倍 晴明 (あべのせいめい)男

平成21年にタイムスリップしてきた男性。30歳

突如家に落雷が落ち、桃子がタイムスリップしてきた。

桃子を式神と名乗り、貴族たちにスイーツを食べさせる役目を与える。

 

 

 

道;藤原 道上(ふじわらのみちうえ)男

晴明を敵視する貴族。29歳。

 

 

 

 

 

 

【本編】

 


道;ほっほ…。晴明よ。久しいでおじゃる。

 


晴;これはこれは道上殿。いかがされましたかな?

 


道;なぁに。麻呂の戯れじゃ。

        お主…最近、帝に会っているそうではないか。

 


晴;えぇ。帝に占いを頼まれておりましてな。

 


道;忌々しい…。薄汚いキツネめ…。

 


晴;ふふ…。思っている声が漏れていますよ。道上殿。

       妖に取り憑かれますぞ。

 


道;だ、だまれ!!

 


晴;さて…。情緒不安定な貴族様の相手も疲れるな…。

       どうしたものか…。

 

 

 

桃;いーーーーやーーーー!!

 


晴;ん?人が……落ちて…!!

       俺の屋敷がああああ!!!

 


桃;いてて…あれ?ここは…どこ?

 


晴;おい…。

 


桃;はい?あれ和服??

 


晴;お前…。どこからきた?

 


桃;どこからって…あれ?オーブンが爆発して…。

 


晴;どんな天然だよ…。

        いいか、ここは西暦943年の平安京平安時代だ。

 


桃;え?何を言って…。

 


晴;俺も最初はそう思ったよ。平成21年に俺はここに飛ばされた。

       まったく…。現代じゃ26年かな。

 


桃;え?今…令和ですよ?

 


晴;令和…?元号変わったの?

 


桃;はい。みんなタピオカとか飲んでますし。

 


晴;タピオカ!?

        あれ、まだ流行ってるんか!?

 


桃;え?タピオカって最近流行った飲み物ですよ?

 


晴;…いやすまん。混乱してきた…。

 


桃;わたしだって混乱してるんですよ!!

 


晴;とりあえず、その服は目立つ。

       これに着替えろ。

 


桃;これって?

 


晴;単(ひとえ)だ。十二単って学校で習っただろ?

 


桃;あー…ありましたね。

       ちなみに…あなたは?

 


晴;俺か?俺は晴明。安倍の晴明だ。

 


桃;はは…。安倍の晴明とか…。まじ…卍。

 


晴;意味がわからんが…。

       とりあえず…お前パティシエだろ?

 

桃;え?えぇ……。

       

晴;ちょっと手伝って欲しいんだが……。

 


     【間を開ける】約5秒ほど

 


晴;さてっと…道上殿。

        文(ふみ)は読んでくださったのですね

 


道;晴明…。あれは文とはいわぬ。

       何が食事会だ…。お前と飯が食えるか。

 


晴;ほう…では何故来てくれたのでしょうか?

 


道;飯ではなく、菓子だけ食べさせろ。

 


晴;はっはっは!!そうですよね…。

       極楽の菓子…。帝に先に食べさせようと思ったのですが、

       道上殿…。私は貴族と対立したいわけではないのです。

 


道;ほう…どう言うことかな?

 


晴;道上殿…。あなたは私が嫌い…

       いや、嫌いなんてもんじゃあない。憎んでいる。

 


道;お主!?世の心を!?

 


晴;ふふ…。いやいや。お気になさらず。

       大丈夫です。悪意は必ず人に存在する妖のような物。

 


道;あれほど読むなと言ったであろう…!!

        は、早く菓子をくわせろ!!

 


晴;そうですね…。ではこちらへ。

 


桃;お待たせいたしました。道上様。

        式神の桃子といいます。

 


道;ふむ…なんとも安っぽい顔の女じゃ…。

       晴明よ。こんなのが好みなのか?

 


桃;なっ…!!

 


晴;いえいえ。道上殿。式神は自分で作りますが、

       姿形は変えられませぬ。ですが…。腕前はご安心を。

 


桃;……では失礼します。

        極楽スイーツ。平安プリンでございます。

 


道;ぷ…ぷりんとな?

        これは、黄金色の……汁?

 


桃;これは牛の乳と雉(きじ)の卵を混ぜた物です。

        汁に甘葛煎(あまづらせん)を加えているので、甘味のあるお菓子になっております。

 


晴;さぁ…。道上殿…。

        味を…試してみては?

 


道;な、なんなんだ…この香り……この風味はぁぁぁぁ!?

 


晴;道上殿…。ヨダレが。

 


道;う、うるさい!!食べる!!食べるぞ!!

       あむっ……。な…なんじゃこの味は…。和歌を…和歌を読まねば!!

 


       なめらかな   口どけゆるむ   いと 旨し    春の日差しの  雪解けかな

 

 

 

晴;ふむ。お見事。

 

 

 

桃;はぁ?プリン食べて和歌?

       しかも意味わかんないんだけど??

 


晴;プリンの口どけが、雪解けのようになめらかで。

       春の日差しのように感じたという意味だ。

 


桃;どのみち…意味がわからない…!!

 

 

 

晴;よーし…桃子。よくやったぞ。

 


桃;え?いきなり呼び捨て?

 


晴;これからは俺の式神という設定で生きていかないといけないからな。

 


桃;あ、それで晴明さん。

 


晴;あー質問は後で。道上殿に今後のスポンサーになってもらわねぇと。

 


道;お…おぉ。晴明…。これは…これは美味じゃ。

       美味なのじゃ!!

 


晴;でしょうな。極楽の菓子ですからな。

        ですが…これは二度と食べれなくなるでしょう。

 


道;な、なんだと!?

       そんなことは麻呂が許さん!!

 


晴;それが帝のお考えだとしても?

 


道;…なっ!?

 


晴;私はこれから帝にこのプリンをお出ししようと思うのですが…。

       そうなると…もう二度とたべられませんな。

 


道;た…頼む!!もう一度!!もう一度だけぷりんを!!

 


晴;そうですねぇ…。私は別の物を献上しようと思うのですが…。

       その代わり、道上殿は何をしてくれるんですか?

 


道;……。わかった。

       麻呂が他の貴族達にも、お主の行動に目を瞑るように申しておく。

 


晴;ありがとうございます。

       毎日とは難しいですが、毎月…でしたら作るように言っておきましょう。

 


桃;…うわー。えげつなー。

 


晴;ん?美味いもん食べたきゃ俺の行動に文句を言うなって事だ。

       切れるカードで問題を解決しただけさ。

 


桃;カードって…私がつくったのに…。

 


晴;人脈から生きる術をしらない現代人のお前が…

       俺なしで生きれると思ってんのか?

       

桃;う…。それで質問は答えてくれるの?

 


晴;あーそうだったな。なんだ?

 


桃;なんで私がパティシエってわかったの?

 


晴;あー…桃子は料理服で来ただろ?

       料理関係の仕事…もしくは専門学校で学んでいると推測。

       そして、料理服には粉砂糖とカスタードクリームの匂いが…。

       多分、シュークリームでも作ってたんじゃないのかな?

 


桃;あ…あんた何者??

       ずっと考えたら気づくことでも…一瞬で見抜いたの!?

 


晴;あぁ…。俺、心理学を学んでたから。

        こっちでは陰陽道とか言われてるけどな。

 


桃;あぁ…そう言うことか…。

 


晴;じゃあ。桃子。

       これからよろしく♪

 

 

 

動物園

タイトル

声劇落語 動物園

 

 

 

 


どうもどうも。

 


ひと昔前に流行った動物園の人気者。レッサーパンダ風太くん。覚えていますか?

二本足で立つ姿が可愛いとかなんとかで。よくテレビのニュースになっておりました。

 


今では孫までいるとかいないとか。動物園のサイクルも大変ですねー。

 


あと、人気者といえば、マスコットキャラクターなんて物もありますねぇ。

ブイチューバーにもアバターの中の人…もとい。魂が入って動いていますねぇ…。

 


では…そんな人気者の話でございます…。

 


仕事が全然続かない。そんな男がぶらぶらと歩いているところから始まります。

 


◯(ため息)まーた仕事辞めちったなぁ…。

 まったく…。俺に会う仕事っていうのはないものかねぇ…。

 俺は朝が弱いから10時くらいの出勤でぇ…。

 頭が良くないから、人と話す仕事もやだなぁ…。

 後、力仕事はしたくねぇ。毎日ブラブラできて、昼飯がついてくるような仕事。

 まぁ給料は…これだけ言ってるわけだから、そんな額はいらないし…

 日給3万でいいや。

 


そんな事をブツブツ言っていると、求人広告の看板が…。

 


◯何なに…?

 日給3万。誰でもできる仕事です。

 へぇ。こりゃいいや。面接を受けてみようかな…。

 えーっとここを曲がって、直進して曲がると…。

 あれ、ここって…動物園じゃねぇか。

 力仕事じゃねぇのかー?やめようかな…。まぁとりあえず、面接だけでも…。

 すみませーん!すーみーまーせーん!!

 


●おっと…どうなされました?

 


◯はい、求人の看板をみて来ました。

 


●看板?あぁ!!あれをみて!!

 ありがとうございます!!どうぞこちらへ!!

 


◯へ?あぁ、はい。

 


●ありがとうございます…。

 私、園長の山田といいます。

 ちなみに、年齢をお聞きしてもいいですか?

 


◯はい、25です。

 


●ほう、いいですねー。

 ちなみに、すぐ仕事はできますか?

 


◯え?すぐいけますね。

 


●採用です。

 


◯いやいやいや!

 ちょっと待ってくださいよ!!

 仕事の内容も聞いてないですよ。

 


●あー。そうでしたね。

 実は…。動物園の人気者だった虎が死んでしまいまして。

 あなたに虎になって欲しいんですよ。

 


◯…は?虎?

 いやいやいやいや!!無理です!絶対に無理です!!

 だって俺!!力仕事できないですよ!?

 


●大丈夫です。虎は力仕事しません。

 


◯じゃ、じゃあ俺朝弱いから、朝の仕事はできませんよ!!

 


●開演は10時です。

 


◯んー…あ!!頭悪いんで、人と話すことは!!

 


●虎は人と喋りませんよ!!

 あと、ブラブラ行ったり来たりするだけですし、昼食もでます!!

 


◯…マジかー…それで…日給3万…。

 やります。虎やります。

 


●ありがとうございます!子供達も喜びますよ!!

 では、これが虎の皮でございます。

 


◯け、けっこう重いんですね。

 こ、これでいいですか?

 


●はい。ではオリにはいってもらって…鍵をします。

 


◯や、山田さん!!そりゃないよ!!鍵かけないで!!

 


●動物園なんですから鍵をかけるのは当たり前じゃないですか。

 


◯そ、そうか…あ!山田さん!!

 


●…なんですか?

 


◯ここでタバコ吸っててもいいですか!?

 


●タバコを吸う虎がいますか!?

 


◯そ、そうか…あ、山田さん!!

 


●今度はなんですか!?

 


◯俺、お腹すいたんですけど…。

 


●もうそろそろ餌をあげますよ。

 


◯餌って…それは生きてるやつですか?死んでるやつですか?

 


●ちゃんと調理したのを出しますから。

 ほら、そろそろ開演です!頑張って気づかれないようにしてくださいね!!

 


◯はい!!また何かあったら山田さんを呼びますんで!!

 


●よんじゃだめです!!!

 


◯さて…。虎の真似かぁ…。大変だなぁ。

 あ、子供がたくさん来てるな。へぇ。こいつはこんなに人気者だったのかぁ。

 どれどれ、子供達がどんな事言ってんだろうね。

 カッコいいとかかなぁ。ふふふ。

 ん?石を投げてやれ…って…こいつ本当に人気者だったのか!?

 

 

 

△ピンポンパンポーン。

 本日はご来園くださり、ありがとうございます。

 それでは、虎のオリまでお集まりくださいませ。

 


◯ん?なんか皆集まって来たな?

 


△本日のメインイベント。

 サバンナの王者とジャングルの帝王の対決でございます!!

 


◯はぁ!?聞いてねぇぞ!?

 あわわわわ!!ライオンがこっちに来やがる!!

 オリに…オリに入れるんじゃねぇ!!

 こ…これじゃあ3万円は安すぎるぞおおおお!!

 だ、誰か助けてくれええええ!!

 

 

 

●こら…大きな声を出すんじゃあない…。

 俺もここで雇われたライオンだ…。

 

 

 

お後がよろしいようで

またなと言う嘘

タイトル

またなと言う嘘

 


配役

2;1

 


アキラ;高町アキラ

トモヤ;有馬トモヤ

マリナ;大宮マリナ

 

 

 

本編

 


アキラ;なぁ…もうすぐ。雪が降るってさ。

 


マリナ;へー…あ。明日の1限なんだっけ?

 


トモヤ;雪ねぇ…。降られたら困るな。電車止まるし。

 


マリナ;えー?止まったほうがいいじゃん!!

              あと明日の1限なんだっけの質問答えろ。

 


アキラ;数学Ⅱじゃね?大体、朝から数学やるのだりぃんだけど。

 


トモヤ;ん?朝に数学勉強するのは頭を回転させるから覚えやすいってテレビでやってたぞ。

 


アキラ;まじかよ…。ってか朝から勉強しようと思うことがやばい。

 


マリナ;あ、それは私も思う!!

              朝はなんかこう…。頭を使いたくないよね!!

 


トモヤ;なぁ…。

 


アキラ;ん?どうしたんだよトモヤ?

 


トモヤ;俺たち…。来年からはこうやってファミレスでだべれねーのかな。

 


マリナ;…。そんなことないんじゃない?

              受験勉強だって、ファミレスでやればいいし。

 


アキラ;そうだって!!

               来年は受験生だけど……。みんな普通に集まれるって!!

 


トモヤ;……。すまん。実はさ……。親の都合で引っ越すことになっちゃって。

 


アキラ;……こんな時期にってありえなくね?

 


マリナ;嘘でしょ…。

 


トモヤ;本当なんだ。嘘だって、俺だって思いたいけど。

              来年の春には、アキラとマリナと…離れ離れになっちまう。

              ごめんな。

 


アキラ;ごめんじゃ……ごめんじゃねぇよ!!

               なんでなんだよ!!受験を控える時期に転校って会社ブラックすぎるだろ!!

 


マリナ;そうだよ!!トモヤだけでも残れなかったの!?

 


トモヤ;親はそうしろって言ったんだけど…。

               やっぱり、家族は一緒にいないとダメだろ?だから一緒に行くことにしたんだ。

 


マリナ;ち…ちなみに何処に引っ越すの??

               関東だったら普通にまた会えるし!!

 


トモヤ;北海道。

 


マリナ;えー…。遠すぎー…。

 


アキラ;もう…会えないなんてことはないよな?

 


トモヤ;あぁ…。多分。

 


アキラ;多分じゃなくて!!絶対会おう!!

               1年でも10年でもかまうもんか!!

              もう一度、この3人で、ファミレス行って、つるんで!!意味わかんねー話しようぜ!!

 


トモヤ;…そうだな。また会おうぜ!!

 


マリナ;うん!!

 


【間を開ける】

 


アキラ;トモヤ…今頃飛行機の中かなー。

              あー……今度はいつ会えるのかな。

 


マリナ;あ、アキラ!!ニュースみて!!

 


アキラ;なんだよ全く……!?

               な……なぁ。トモヤの乗った飛行機って…

 


マリナ;うん…。今…テレビで映ってる飛行機…。

 


アキラ;な……なんでだよ!!墜落!?ふざけんなよ!!

              と、トモヤに連絡を!!

 


マリナ;もうしたよ!!

              ……したけど…。連絡できないんだよ。

 


アキラ;…そんな。

 


マリナ;アキラ……。

 


アキラ;…ありえねぇよ。そんなドラマみたいな展開。

              転校するだけでショックだったのに。

              なぁ…これドッキリか?ドッキリだよな??おい!カメラ何処だよ!!

 


マリナ;アキラ落ち着いて!!

 


アキラ;落ち着け!?落ち着けるわけねぇだろうが!!

               トモヤ死んじまったんだぞ!!

 


マリナ;お願い……。アキラも…壊れちゃうよ…。

 


アキラ;……ごめん。

 

 

 

マリナ;(それから、私とアキラも会うことをやめた。)

               (一緒にいたら、トモヤを思い出すから…。そしてトモヤが死んで2年が経った)

 


アキラ;3回忌か…。

             トモヤ……。俺、20歳だぜ?酒呑んで、タバコ吸っても怒られない年齢になっちまったよ。

 


マリナ;……アキラ?アキラなの?

 


アキラ;マリナ?

 


マリナ;…久しぶり。

 


アキラ;お前……恋人できたんじゃなかったのか?

 


マリナ;うん。でも別れちゃった。今さっき。

              男友達に会いに行くっていったら怒られちゃった。

 


アキラ;死んだ奴の墓参りって言えばよかったのに。

 


マリナ;言ったんだけど…。なんか…気分が悪くなったみたい。

 


アキラ;器の小さい彼氏様で…。

 


マリナ;ほんとにね。

 


アキラ;あのニュースのこと…まだ俺は信じてないんだよ

              トモヤが、トモヤの家族が、飛行機をハイジャックして墜落させたって。

 


マリナ;私も。

              あんなに優しかったのに。

 


アキラ;だからあいつ……また会おうぜって行った時、

               悲しそうな顔をしてたんだな。

 


マリナ;やっぱり気づいてたんだ。

 


アキラ;でも…信じれないんだよ。

              アイツがテロリストだとして……俺達と一緒にいた時間も、アイツの笑顔も嘘だったのか?

              ちげぇだろ…。ニュースでトモヤの事を悪く言う学校の連中とか…教師とか…。

              アイツの事なんもしらねぇのに…。ベラベラと言葉を言ってやがって…。

 


マリナ;みんな…。本当のトモヤを知らないんだよ。

              マスコミだって……悪く言う人テレビで出したかったんだよ。きっと。

 


アキラ;……なぁトモヤ。

             お前は……どうして、テロリストにされちまったんだよ…。

 


マリナ;……じゃあ私そろそろ行くね。

 


アキラ;……またな。

 


マリナ;うん……また。

 


アキラ;(……これも嘘…だな。

               再会を願う為の「またな」って言葉は俺も、マリナだってそうだ。

               会いたくないんだ。会ったら、トモヤを思い出す。

               だから俺らのまたなは嘘なんだ。)